肩凝りや冷え性の改善、不妊治療などにも効果が高いはり灸治療が評判の「せりえ鍼灸室」。ビルの7階にあるこの場所から見えるのは、車の往来が絶えない横浜・桜木町のせわしない街並み。その様子とは裏腹に、ここは穏やかな時間が流れています。
患者さんの中には、不妊治療や婦人科疾患に悩む方も多いため、女性が心癒される場所を作りたい…。鍼灸室を二人三脚で営む小井土喜光先生と辻内敬子先生は、3年前の移転の際、そんな想いを胸にエントランス、廊下、3タイプある診療室を、アトピッコハウスの自然素材でリフォームしました。
「まず、空気がとてもきれいですね。窓の結露も解消されたし、洗ったタオルを干して帰ると、翌朝カラッと乾いているのにもびっくり。『すっぴんクロス』や『はいから小町』が湿気を吸い込んでくれるんですね」と、呼吸する素材の特性を実感しているようです。
「それと、患者さんの中には、珪藻土という名前は知っていても、実物を見たことがないという方が意外と多いんです。『はいから小町』を塗った廊下の壁を見て、『質感が素敵』『自分で塗ってみたい』と言う声がたくさん届いてますよ」。自然素材の魅力を体感し、自分の生活に取り入れたいと思うきっかけになったら嬉しいと、小井土先生は話します。
今年は、手つかずだった待合室のリフォームを計画中。予算に合わせて、優先順位の高いスペースから順番に、がお二人の気持ちいい空間作りの考え方。住宅リフォームの場合も、まずは家族が集まるリビングからというように、少しずつ、でいいんですよ。
小井土先生がこの鍼灸室を開いたのは30代のこと。20代は、ジャーナリスト志望の好奇心に後押しされ、日本中を旅行し、時には原子力発電所を訪れたことも…。無農薬野菜の配達を経験し、一方で緑地管理の仕事で街路樹に大量の農薬を散布したこともあるそう。そんな経験が教えてくれたのは、「世の中は、人もモノも価値感もさまざま、ということかな。だから、ひとつのセオリーに捉われず、その人の五感が求める事を選べばいいんです」
鍼灸室で治療を受けた後、体がラクになったと感じるのは、五感が正常に戻った証拠だとか。つまり、自分にとっての“快適”を見極められる状態を取り戻したということです。お二人が行う治療は、暮らしの中で正しい選択ができる、健康な心と体作りに一役買っているのかもしれません。
「私なんか千葉の田舎育ちでしょ。野菜は自分で作っていたし、今でも味噌や梅干しは手作りなの。自然派?昔からしてきただけ、こだわりはないのよ(笑)」。情報に惑わされず、健やかな感覚を持ち続ける辻内先生が、羨ましく思えます。
また、「自然素材はコストがかかる」という潜入感に対しては、こんな発言も。「自然素材は高いと言われますが、それは非自然素材と比較してのこと。合板フローリングと無垢材という、明らかに性能が違うもの同士を比べるのはナンセンス。自然素材というカテゴリーの中で品質を比較し、予算に合った一品を選べば価格の違和感はなくなりますよ」
「ほら、触ってみてください」。そう言って、『すっぴんクロス』と自分の肌を合わせ、やさしい質感を楽しむ小井土先生。五感に正直に選んだ結果、最高に相性のいい気持ちよさと巡り合えたようです。