車窓からの景色が一面畑に変わり始めると、もうすぐ柿沼さん一家が暮らす栃木県の佐野市駅に到着です。柿沼家は、イチゴ農家を営む新二さんと奥様の佳代子さん、そして誠一郎くん、慶佑くんの4人家族。梅雨が明けたこの日、家庭菜園がある庭先では自家製の梅干が夏の太陽を浴びていました。
柿沼さんが新居を構えたのは1年前。施工は親戚の大工さんに依頼しました。「当初、“これは譲れない”というこだわりはなかったんです」と佳代子さん。
「でも、うちは次男が喘息だし、途中からどうせ建てるなら安心して住める家がいいと思い始めて、雑誌で見た『アトピッコハウス』に相談したんです。結婚前、私は大学病院で看護師をしていたので、新建材に含まれる化学物質が体に有害なことなど、多少なりともあった知識が家族の健康を守りたいという思いに拍車をかけました」
1階リビングと水廻り、2階の子ども部屋には、自然塗装の「ごろ寝フローリング」を。壁はやさしい風合いの「すっぴんクロス」。寝室を兼ねた2部屋ある和室には、「ほんものたたみ」を敷き、出来上がってみればとても贅沢な自然素材の家に。
佳代子さんの自慢は、無垢材のキッチン「森の台所」です。大工さんが提案してくれたステンレス製のシステムキッチンが、家の雰囲気に馴染まなかったため、価格が大差ないならと思い切って注文。
「なるべく濡れた手で触らない、汚れたらその場で拭く。気をつけているのはそのくらいで、大らかにつき合っていますよ。十分な収納力も気に入っています」
リビングとキッチンの間に仕切り壁がないため、無垢の床との調和が目を引き、遊びに来るご近所さんたちからも、「見栄えがするね」と好評だそうです。
「田舎ほど、“自然素材がいい”という認識がまだまだ薄いと思うんです。築数年経った友人宅を訪ねて、未だに新建材のイヤなにおいがすると、本当の安心を知らずに家を建てるって怖いなと感じます。家は家族の健康に関わるもの。自然素材を選んで、本当によかったです」
佳代子さんは、無垢でも杉のように香りの強い素材だと息苦しさを感じるそう。「アトピッコハウス」は、そんな悩みにも耳を傾け、最適な素材を提案してくれたきめ細かい対応がよかったといいます。
マイホームの出来栄えに満足そうな柿沼さんご夫婦。でも、途中で計画を変更したことで、大工さんの提案に反するかたちとなり、折り合いをつけるのに随分と苦労したとか。また、大工さんに自然素材の知識がなかったことが、説得の道程を困難にしました。
「経験を踏まえて言うと、予めライフスタイルに合った“理想の家”のイメージを固めて取り掛かるべきですね。作り手については、自分のセオリーを押しつけず、施主の要望を汲み取ったうえで、それを叶えるための幅広い選択肢を提案してくれる人が理想的」
柿沼さんの場合、大工さんが親戚という近しい間柄だったため、今後のおつき合いを考えると言えない本音もあったそう。ただ、頑固な職人気質ゆえの丁寧な仕事ぶりは高評価。柔軟な感性、確かな技術、時代に沿った知識をバランスよく兼ね備えた、暮らす人本位の作り手との出会いが、幸せな家作りのカギといえそうです。
新二さんはというと、「家に一番長くいるのは妻だから、好きなようにすればいい」と、大らかに見守っていた様子。柿沼家は、どっしりとした強くやさしい一家の大黒柱と安心のマイホームに守られ、幸せな空気に包まれていました。