1998年8月、横浜事務所にて
今から20年前、アトピッコハウスは、健康に配慮した内装材の専門メーカーとして誕生しました。
といっても、そのスタートは、シックハウス対策を専門とするリフォーム会社としてでした。
創業の2年ほど前、平成6年当時、関西に本部を置く「自然住宅」を研究するグループに毎月のように通い、健康に配慮した家づくりを学んでいました。
そして、また横浜に本部を置く、「エコロジーリフォーム」の研究会にも所属し、健康に配慮した住宅リフォームのことを学んでいました。
平成8年11月、アトピッコハウスは、シックハウス対策専門のリフォーム会社として横浜で創業し、その直後から、健康に配慮した建材の開発に着手することとなりました。
最初は、減農薬・無着色の畳を手に入れる所から、オリジナル建材の開発が始まりました。
当時の畳は、農薬や着色剤、防虫剤などの使用によって、とても、ゴロゴロできるような代物ではありませんでした。赤ちゃんが、安心してハイハイできる畳が欲しいといったことから、畳表(イグサ)の契約栽培、そして「安全な畳」の開発へと発展しました。それが、「ほんものたたみ」の最初の物語です。
後藤と、い草農家の園田さん
自宅に使いたいと思える健康的で、安全で、愛着が湧く畳を開発したいと思いました。
畳はイグサという植物から出来た「畳表」を、「畳床(畳の芯の部分)」に貼った日本の伝統的な内装材ですが、「イグサ」の安全性を追求することは困難です。栽培には除草剤や防虫剤といった農薬を使い、使った農薬が「イグサ」に残留します。また色を良く見せる「合成着色剤」が使われています。建材とはいっても直接肌に触れる商品なのに、農薬に関する使用制限も、安全に関する基準もありません。
初期のころ、「無着色・有機栽培」を謳った畳表の生産者を訪ねたら、「実はほんの少し着色剤を使っていた」ということもありました。そこで「アトピッコハウスの考え方」を理解して頂ける生産者に「契約栽培」して頂くことから、安全な畳作りに着手しました。
自分の家に使いたい商品を作るというのが、基本の考えでした。
そして、平成12年、大手マンションデベロッパーとの業務提携という大きなチャンスがあって、オリジナル建材の開発に弾みがつきました。
畳の次に手がけたのは、エコロジーな壁紙でした。エコというより、昔ながらの本物の壁紙といった方がいいかも知れません。布で出来た本物のクロスです。
22年前、毎月通っていた自然住宅を研究するグループの中に、昔ながらの伝統的な壁紙を作っている工場の役員がいて、その方に、アトピッコハウスのオリジナル壁紙の開発を依頼しました。それが、今の「すっぴんクロス」です。
壁紙のことをクロスと言いますが、クロスとは、まさしく布のことで、本来のクロスは、布に紙を裏打ちした内装材だったのです。その工場では、まさしく、「本物の壁紙」を作っていました。
すっぴんクロスは、薬剤処理をしないことを基本にしています。だから、台所などの火器使用室に使える製品は、2種類しかありません。ただし、逆に言うと、防火認定品を使う必要のない部屋に、薬品処理した壁紙を張る必要はないので、あまり問題がないともいえます。
アトピッコハウスでは、出来るだけ薬品に頼らない製品開発をするポリシーを持っています。
それは、内装材が室内の空気を作っていると考えているからです。有害な化学物質が揮発するような内装材を作りたくないのです。
壁紙と同時期に開発をスタートしたのが、オリジナルの無垢フローリングでした。こちらも、大手マンションデベロッパーとの業務提携といったチャンスがあって開発できたと言えます。
資本金300万円のちっぽけな有限会社がオリジナル仕様でフローリングを作ってくれと依頼したところで、相手にしてもらえないのが普通です。しかし、「大手の技術顧問」という肩書と、その販売力が効果を発揮しました。
そのお蔭もあって、国内の製材所、フローリング工場、また海外の工場等にも話を持っていくことが出来て、様々な製品開発をすることが出来ました。それが、「ごろ寝フローリング」です。
無垢フローリングは、違いが認識されにくい素材です。しかし、材料の乾燥から製材、塗装と配慮しないとならない技術的な要素は沢山あります。もちろん原木の良し悪しもあります。アトピッコハウスでは、多少高くても、品質重視、そして、施工精度が高くて、ロスの少ない製品を作ることを心がけています。
もちろん、有害で無意味な薬品処理などもしておりません。
畳、壁紙、フローリングと来て、次に出会いがあったのが、各種塗り壁を作る老舗の工場でした。
当時、珪藻土の塗り壁がブームになっていました。そして、その工場は、珪藻土をマグネシアとにがりで固める技術を持っていたのです。その技術を使えば、接着剤や糊を混ぜなくても、珪藻土を大量に入れて、調湿性能に優れた塗り壁が作れる。そして、思考錯誤の末完成したのが、一般的な漆喰の6倍以上も調湿する珪藻土塗り壁「はいから小町」だったのです。
マジネシアとにがりで珪藻土を固める技術は素晴らしいものでした。しかし、技術的に難しい面もあって、数々の失敗もありました。その過程で、アク止め下塗り材「下塗革命」や、漆喰調の塗り壁「漆喰美人」、カオリンの壁「パーフェクトウォール」なども誕生していきました。
品質重視の製品開発コンセプトは変えることなく、コストを抑えた製品の開発にも取り組みました。
つまり、いくら品質が良くても、価格が高すぎると、諦めざるを得ない人がいるからです。
オリジナル壁紙「すっぴんクロス」の開発と同時に、専用施工糊「こむぎちゃん」の開発も致しました。また、「ごろ寝フローリング」施工用の専用接着剤「ゼロホルム接着剤」も開発しました。
こうしてアトピッコハウスは、床、壁、天井に使う内装材が一通り揃う自然素材の内装材専門メーカーになったのです。
「予防原則」とは、たとえ現時点で因果関係が証明されていなくても、「毒性」が疑われるものは予防的に使用を中止しようという考え方です。最近では、一般の医師の間でも使われるようになった単語ですが、創業当事はごく一部の研究者のみが使っている程度でした。アトピッコハウスでは早くから、この見解を提唱し、建材の開発及び選定は、この「予防原則」に基づいています。
具体的には次のようなことを大事にしています。
私は妻のアトピーがキッカケで、人の健康を害さないような家づくりや、自然素材の内装材開発に着手するようになりました。
製品開発の基本は、「自分の家に使いたい」製品であるかどうかということです。
住宅作りは、理論的に小さいことを積み重ねていかなければならない反面、感覚や直感を無視すると失敗することが多いという両極端な性格を持っています。
自然素材だから安心、合成化学物質だから危険という単純な物ではなく、自然素材でもアレルギーを引き起こす素材があるように、エコ、環境、健康、ロハスなどをバランス良く、トータルに考えられることを大切にする住まい作りが大切だと思います。
畳の着色料は、当時よりも格段に少なくなりました。それでもゼロではありませんし、農薬、抗菌剤の問題は変わりません。そして塗り壁が人気といっても、内装材の主流はビニールクロスです。私は、難しい説明をしなくても、アトピッコハウスの製品が一番安心だと言って頂けるような製品を作りたいと思っています。
そして、ユーザーもプロも、安心して健康的な家作りが出来るようにしたいと思っています。大手マンションデベロッパーの後ろ盾はなくなりましたが、私の考えに賛同してくれ、協力してくれる仲間は増えました。
これからも精一杯、安心、安全、魅力的な自然素材の内装材を作り続けていきます。
2016年9月19日 鎌倉の自宅にて
アトピッコハウス株式会社
代表取締役